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6月の帰還・再突入にむけて運用もしだいに秒読み状態になってきました.再突入カプセルの担当の方々には,
本当にお待たせいたしました.これからが本番です.再突入と回収は,はやぶさ計画を代表する目標の1つです.
なにしろ,スペースシャトルなどの地球周回軌道からの再突入に比べると1桁も高い熱の条件にさらされ,
それに耐える新規技術ですので, これは大きなステップですし,また大きな関門でもあります.

多くの方は,はやぶさが地球の近くに帰ってくれば,再突入はパラシュートを開けば完了するかのように お考えの
方も多いのではないでしょうか.はやぶさから切り離されたカプセルは,高度が70-80km という高々度で最大の熱の
環境にさらされます.パラシュートを開くのはずっと低い高度ですから,なんといっても耐熱技術こそがまさに真価を
問われるわけです.はやぶさは,まず,これに挑戦することになります.

この帰還・再突入にむけて,今月から来月にかけて,はやぶさ探査機の運用は佳境を迎えます.よく受ける質問に,
これからどんな難しさが待っていますか?というのがあります.大変心配しているのは,1.ホイールの寿命,2.
イオンエンジンの運転性,3.漏洩燃料の再ガス化,4.イオンエンジン運転中の軌道決定,5.耐熱材の状態,
火工品の環境,分離バネの経年変化です.
ホイールは,ほかの同一設計・製造の2つのホイールが4年前に故障していて,現在残っている1つが稼働できている
ことは奇跡的なことです.イオンエンジンは昨年11月,幸いにも代用の方法で運転を再開できましたが,
本来の使用法ではないために,中和器の状態などがテレメータで情報が見えない運転を余儀なくされていて,
かりにダメージを受けやすい運転状態に置かれていたとしても,それを把握できないなど,不安な運用が続きます.
ご報告しているようにA エンジンは,電子レンジでいえば空だき状態で,その寿命も心配なところです.
2005年から2006年にかけて探査機を襲った燃料の漏洩についても,これまで何度か残存ガスの排気を行うべく
ベーキングを行ってきましたが,5月以降は,地球公転軌道よりも内側に入るため,探査機上面の温度がどんどん
上昇して,再びガスが噴出しないか心配なところです.はやぶさ運用で確立をはかってきたイオンエンジン運転中の
軌道の推定技術は,ある程度の精度を確保できる段階までに到達しているのですが,のこりの地球帰還に向けての
推定精度を確保できるかどうか,これも大変気がかりなところです.カプセルの耐熱材は,担当者は自信をもって
いますが,探査機の飛行が7年間に延びたことから,性能への影響などやや心配な点があります.
火薬類を用いる機械的なデバイス(火工品)やカプセルを分離する高分子材料製のバネの経年劣化など,
分離の機能が発揮できるかも大いに心配なところです.

この帰還と再突入のイベントが,やり直しのきかない1回かぎりの運用だという点は,あまり認識いただいていないかと
思います.ロケットの打ち上げも,また軌道上での通常の衛星の運用も,不具合が起きれば翌日に延期して対処が
可能です.しかし,この再突入の運用には待ったがありません.どこか途中で運用できない状態が起きれば,
その原因が,搭載系であればもちろん,かりに地上系にあったとしても,再試行ができないか,あるいは再試行が
間に合わないことになって,失敗してしまいます.スペースシャトルの再突入では,地上系に問題があれば,
また着陸点の天候が悪ければ延期すればよいわけですが,このはやぶさの再突入には延期はないのです.
ですから,地味ではありますが,このはやぶさの帰還・再突入は,大変に厳しい運用で,とりわけ傷を負った
はやぶさにとっては,かなりの難関になります.

はやぶさの帰還,カプセルの再突入に先立ち,5月には,あかつき,IKAROS の打ち上げがあります.
すでに,あかつきへのお名前,メッセージの受付は終了していますが,IKAROS の方は,まだ応募が可能です.
IKAROS は,はやぶさの意志を継承して臨むもう1つの新たな挑戦です.みなさん,IKAROS キャンペーンへも
参加をお願いします.

URL はhttp://www.jspec.jaxa.jp/ikaros_cam/j/index.htmlです.

6月は,サッカーのワールドカップの月ですね.でも,「はやぶさ」も精一杯がんばります.みなさんの声援を
期待しています.


はやぶさプロジェクトマネージャ 川口淳一郎


 

 

 

 






 

 

 
 
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